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電話拳【でんわけん】


 電信電話拳とも呼ばれる.中国河南省に伝わる形意拳の一つで,成立は1200年代とも1970年代とも言われる.
 酒に酔った様な動作から攻撃を繰り出す酔拳に似て,電話拳では電話で話す姿勢から,様々な攻撃を繰り出す.

 本誌は今回,日本電話拳師範山口素動氏に直接インタビューする機会を得た.何かとの一人歩きしがちな電話拳だがこのインタビューによって,その秘密のヴェールが剥がされる.

 刮目すべし!諸君!


◎ 電話拳一問一答 ◎

Q:電話拳の基本の構えを教えて下さい

A:電話拳では「電話をかけているフリ」が基本の構えとなります.
ここで重要なのは,”フリ”でなければならないと言うことです本当に電話をかけて会話に熱中してしまっては闘いになりませんから(笑)
最も一般的なのは受話器を耳に当て,巻結線(注・中国語でカールコード)を指に絡ませ,上左方45度のあらぬ方向をぼんやりと見つめる立ち方です.この姿勢で様々な会話をするのです.


Q:電話拳の基本攻撃「電話掌」について教えて下さい

A:受話器を耳に当てた姿勢から,受話器を握りしめ,そのまま力一杯前に突き出します.それだけかと笑う方もいらっしゃるでしょうが,軌道が見切りにくくその威力も絶大です.現代ボクシングにおいては,この技はテレフォンパンチと呼ばれ禁じ手とされていています.


Q:電話拳においてはどの様な会話を心がけるべきですか?

A:ここを誤解される方が多いのですが(笑)
電話拳では本当に会話をするわけでないのですから内容は関係ありません.
むしろ,相手に「どんなことを話しているのだろう?」と興味を持たせる技術が必要になります.例えば小声でボソボソ喋った後に大笑いをしたら,何を喋っていたのか気になるでしょう?

 これは電話拳の基本「小声後笑」ですが,修練を積めばこの技法だけで他の格闘技と五分以上に渡り合えます.「はじめチョロチョロ中パッパ、赤子泣くなら泣かせて見せようホトトギス」この心構えを忘れないで下さい.


Q:電話拳の達人の電話を受けると発狂するというのは本当ですか?

A:発狂というのは大袈裟ですが(笑)
達人の「もしもし」を素人の方が受けたら,何を話し出すのか気になって仕方がなくなって,一晩は眠れませんね.

達人として名高かった我が師匠のエピソードにこんなものがあります。

師匠が近所の寿司屋に電話をかけた時のことですが…
師匠が「もしもし」と語りかけただけで,電話を切られてしまいました.後で電話をとった寿司職人に聞いてみると,強度の「実存的不安」にとらわれて反射的に電話を切ったとのことです。

すぐ切ったにもかかわらず,ひどい後遺症が残ってしまったそうです.

 なんでも,ご主人,シャコシャリの区別が付かなくなってしまったそうでこの店の寿司は,シャコとシャリが間違っていることがあるんですよ(笑) 

 だから,トロを頼んでも,シャコの上にトロが乗った寿司がでてきたりするんです.シャコを頼むとシャコの二枚重ねとかシャリの二段重ねとか変な寿司がでてきたりする(笑)

これについては,師匠も「悪いことをしたと」ずいぶん悔いていたみたいですよ


Q:最後に,近年まで秘伝とされていた「携電乍四輪」について教えて下さい.

A:携帯電話をかけながらの自動車運転と言ったところですが…
かなり危険な技のために,公開しないように警察から指導を受けていますので,コメントは差し控えさせていただきます.


 (回答:日本電話拳師範 山口素動,聞き手:壇 宗綱)
月刊「武術探訪」1997年11月号

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