天才醤油少女カオリ
■ストーリー

第3部 聖地探索編
  二の鍵〜チョウ兄弟

 一部に超絶人気のチョウ兄弟。みんなーテツヤも応援しなきゃダメだ!


「濃厚!我等が血よりも濃い醤油…その1」

新宿駅で醤油の鍵を手に入れたカオリ。しかし、鍵の使い方も第2の鍵の所在もわからない。途方にくれたカオリは富士樹海にある背布由寺の丸大豆和尚を尋ねることにした。

背布由寺の近くまで来たカオリを背後から襲う美少年が現れた。
「賊め!背布由寺に近寄らせはせんぞ!」

背布由寺で世界醤油選手権の招待状を盗み出した前科のあるカオリは焦って、男を飛醤油で迎え撃とうとした。

 が、その瞬間、聞き覚えのある声が…

「待て!イル!」

…それは正義の醤油士チョウ・カンファ!
「兄さん…」そう呟いた美少年こそチョウ・カンファの実弟、チョウ・イル!
「世界醤油チャンプに歯向かうのは早すぎるぞ。イル。」イルをたしなめ、カオリに向き合うチョウ・カンファ。

「カオリさん。弟のイルが失礼をした。以前、背布由寺に盗賊が入って以来、この寺も少々神経質になっていてね。」
「そ…そう…気にしてなんかないよ」

カオリの声は心なしか震えていた。


 
「濃厚!我等が血よりも濃い醤油…その2」

カンファとイルは韓国の醤油寺「伝醤寺」で修行した醤油戦士。 カンファは指導に、イルは修行にやってきた。

  イルは背布由寺から世界醤油選手権に出場する野望を持っていたのだが、泥棒(カオリ)に招待状を盗まれてしまったため、その夢はかなわなかったのである。

  その恨みを切々と語るイル。あくまでさりげなく聞き流すカオリ。 そこにとりたてて特徴のない顔の男がやってきた。

「カオリ〜!」 男はカオリの元に駆け寄る
「戻ってきたのか!カオリ!うれしいよ!」
「あんた誰?」

男の名はテツヤ。あまり才能のない醤油士で、カオリに恋心を抱いているうだつの上がらない青年である。

「おぃおぃ冗談はやめてくれよ。俺だよ。一緒に修行したテツヤだよ!」
「誰?」 忘れっぽいカオリは本気でテツヤのことを忘れていた。テツヤは必死で食い下がる

「おいおい。ふざけるなよ。ほら、醤油百人組み手の時に…」
「知らない」
「いや、だってほら。カオリがくじけそうな時に…何度も…」
「知らない」 「だって、二人でいっしょにあんなに桶を…」

テツヤがふと気づくとカオリとチョウ兄弟の姿は無かった。

「カオリ…今更恥ずかしがることないじゃないか…」
それでもテツヤは何か勘違いしたままだった。


 
「濃厚!我等が血よりも濃い醤油…その3」

カオリ・チョウ兄弟の3人は丸大豆和尚の待つ本堂に入る。 再開の挨拶もそこそこにカオリは懐の醤油の鍵を取り出す。

「それは…まさか…醤油菩薩の…」と丸大豆和尚
そのとき、キィーンと耳をつんざくほどの高周波音が鳴り響く!

その音は本堂にある仏像の額のあたりから、そしてチョウ・カンファの懐から鳴り響いていた!

醤油第一の鍵!それはかつてこの背布由寺の醤油菩薩の額に埋め込まれていた門外不出の秘宝だった。しかし、江戸時代、何者かに盗まれ、今までその存在が不明になっていたのだった!

チョウ・カンファは懐から金属の棒を取り出す。細かく震えるその棒の頭には2つの醤油結晶がついていた。 これこそ第二の鍵!それは伝醤寺に伝わる秘宝であり、チョウ・カンファが守っていたのだった!

「それが第ニの鍵…なんでチョウさんが…」いきなり目的の鍵を発見し戸惑うカオリ
「鍵は鍵を呼ぶというが…やはり…醤油合は始まっていたのか!」丸大豆和尚

「まぁいいや。その鍵ちょうだい。チョウさん」
秘宝をまるでスナック菓子のようにねだるカオリ。

あまりにも急激な展開にあっけに取られたチョウ・カンファは鍵をカオリに渡しかけてしまう…

ドンッ!

突如、巨大な桶が障子を破り、本堂に投げ込まれた!
濃厚な醤油の香りが本堂に立ち込める。


 
「濃厚!我等が血よりも濃い醤油…その4」

桶を投げ込んだのはチョウ・イル!その目は狂気がかっていた。

桶を投げ込むのは醤油決闘の証!イルはカオリに醤油決闘を申し込んだのだ!

「何をやっているんだ!兄さん!チョウ家の男子は鍵を守らねばならぬ!」
「よせ!イル!寺の中での醤油決闘はご法度!破門だぞ!」
「かまわない!兄さんを倒したカオリを倒せるのなら!和尚!カオリと闘わせてくれ!」
「イルよ…」
丸大豆和尚が止めようと腰を上げた瞬間

「いいじゃない。叩き潰してあげるよ。負け犬!」
身もふたもない挑発するカオリ!

イルが醤油が入ったビンをカオリに投げつけ、カオリも腰に下げている醤油ビンをイルに投げつける。

醤油決闘!それはお互いの醤油を飲み干し、いずれの醤油が上かを競い合う醤油士の真剣勝負。 ジャッジは決闘者が行う。そのジャッジにはいかなる思い上がりも妥協も許されない。醤油士としてのプライドが問われる勝負なのだ。 カオリは今まで醤油決闘で負けたことがなかった。もちろんカオリが極端に負けず嫌いであるため、ジャッジがやや自分よりになってしまうせいもあるのだが…

 そのカオリがイルの醤油を飲んで愕然とした!濃厚な喉越しと奥深い味!世界醤油選手権でもこれほどレベルの高い醤油はなかった。カオリの必殺醤油ならともかく、今投げた「溜家本醸造濃口醤油(市販品)」では負けてしまう!醤油ビンに口をつけたまま戦慄とするカオリ!

「カオリ――これこそ我らが血よりも濃い醤油!『兄弟の血脈(チョウズブラッド)』!!」
イルは勝利を確信する――――!


 
「濃厚!我等が血よりも濃い醤油…その5」

イルとカオリの二人が醤油を飲みつづける。負けを覚悟し下を向くカオリ。
勝ち誇った表情のイル。勝負は決したかに見えた。

だが、チョウ・カンファがカオリに歩み寄り、カオリが飲むイルの醤油を奪ってしまう!
「!?!」
正義の醤油士チョウ・カンファが決闘に手を出すとは?状況が飲み込めず目を白黒させるカオリ。

チョウ・カンファはイルの醤油を少しなめると、突如険しい顔になりその醤油ビンをイルに投げつける! ビンが喉に当たり悶絶するイル。

「ゲホッ!何をするんだ!兄さん!」
「恥を知れぃ!イル!」
チョウ・カンファはイルを激しく叱責する。

「チョウさん…?」 事態が飲み込めずにおろおろするカオリ
「カオリさん…この醤油は私が…途中まで仕込んだ醤油…いわば二人がかりの醤油です。これではフェアではない」
「僕はいつだって兄さんと一緒に闘いたい…それだけなのに…」
片ひざをつき、不服そうにチョウ・カンファを見上げるイル。

その時、ひんやりと冷たい風が吹いた。

「ならばこちらも二人がかりではどうかな?」
ふと気づくとそこには金属のマスクをつけた仮面の男が立っていた。 ただならぬ醤油気を漂わせるその男…そう、彼の名はニ段仕込み仮面!

「もっとも私が本気を出すこと自体、フェアではないのですがね…フフフ…」


 
「濃厚!我等が血よりも濃い醤油…その6」

「遅かったではないか。二段仕込みよ。」と丸大豆和尚
「すいません。和尚。近頃野暮用が増えてしまいましてね。」と二段仕込み仮面。
丸大豆和尚と二段仕込み仮面。二人は顔なじみなのか…?

二段仕込み仮面はカオリの醤油ビンの前に立ったかと思うと腰を落とし手を前に伸ばす。合わせていた手を左右に開き、醤油ビンをつかんだ。 周囲の大気が震える。温度も幾分高くなり、森がざわめく。そして大気の振動は二段仕込み仮面の腕を伝いビンに収束する。

「背布由寺奥義!二段王!」

醤油ビンは震え、液面が跳ねる。
そして二段仕込み仮面は揺れも収まった醤油ビンをイルに差し出した。

「さぁ」仮面の奥の表情には笑みが浮かんでいた。
「あ…あぁ」操られたかのように醤油を飲み干すイル。

イルが醤油を飲み干すとともに見る見るその顔色が紅潮する。
そしてイルは醤油を飲みきるとともにビンを床に落とす。
微動だにしないイル。イルは立ったまま気絶していたのだ!

「イ…イル…」
カンファがかけより、声をかけるが反応がない。

二段仕込み仮面はチョウ兄弟に背を向けたまま語る。
「醤油の気に己の気を打ち込み醤油の味を増幅させ、いかなる醤油でも絶大な美味に変える。これが背布由寺奥義『二段王』!」

圧倒的!圧倒的な二段仕込み仮面の醤油力!
彼は何故、背布由寺に現れたのか?丸大豆和尚との関係は!?


 
「濃厚!我等が血よりも濃い醤油…その7」

激しいバトルを終え、全員が本堂に集まっていた。

「やはり醤油合は始まっていたのですか…」と二段仕込み仮面
「うむ。こうして鍵が集まり始めたこと自体その証拠といえよう」和尚は沈痛な面持ちで語る。
「和尚。醤油合って?」
「醤油はな、常に新たなる世界を切り開いてきたのだ…醤油自身たちの手によってな…」
「???」
何の事だか全くわからないカオリ

「数百年に一度、世界の醤油はざわめき、醤油の鍵を聖地に集結させる…そして全ての鍵が聖地に集結したとき、醤油の新たなる歴史が開かれる…それが醤油合じゃ…」
「でも鍵集めてんのは醤油じゃなくて私だよ?」とカオリ

「それも醤油の導きに過ぎない…伝承によればな…いずれにせよ一度醤油合が始まれば完成するまで何人たりとも止めることはかなわぬ。」
「醤油合が完成すると何がどうなるわけ?」
「わからぬ…だが醤油合を完成させたものは、醤油の全てを知ることができるという…二段仕込みを呼んだのは醤油合が始まったのかを相談するためじゃったが…もはや疑いはない…醤油合は正にいま進行しておる…」
和尚は立ち上がると醤油菩薩の前に歩み寄り、醤油菩薩を見上げて背布由寺の歴史を語った。

「そもそもこの背布由寺…伝醤寺もそうだがの…かつて醤油合を完成させた、偉大なる醤王の教えを伝えるために作られた寺なのじゃよ…」

「醤林寺…ですね…」チョウ・カンファが口を挟む。
「醤林寺…全ての醤油の源流と呼ばれた地…」二段仕込み仮面が呟く、その声には恐れと憧れが混じっていた。

「そこであれば、醤油合の謎も、鍵のありかもわかるかもしれん…カオリよ…醤林寺を目指せ!」と和尚が言ったとき、既にカオリの姿はなかった。

「あっ!私の鍵もない!」チョウ・カンファが驚きの声をあげる。
カオリは既に第二の鍵を奪い、醤林寺を目指して背布由寺を後にしていた。

「…ふふふ…聖地…オールゼロ…醤油合…面白そうじゃない。さーて。デヴィッドより先に醤林寺につかないとねぇ」 カオリはあふれてくる笑みを押さえきれないようだった。笑みを浮かべたままカオリは飛醤油に乗り、樹海を疾走する。



 

天才醤油少女カオリtop | 「Dの嘘」top