嘘書籍探訪
『大嘘新聞』
 著・光デパート ・やゆよ・義眼・佐野 祭
色々な意味で貴重!
速やかな購入を勧める一冊!

実のところ、日本で「笑わせる」ことを目的とした書籍というのは少ない。

ギャグ漫画ならまだマシだが、文章で笑わせる書籍と言ったら数えるほどで、一般に知名度があるのはせいぜい清水義範か土屋賢二くらいだ。しかも、どちらも一抹のおっさん臭さがぬぐえない。著者が笑わせようとしているところが見え見えで「えっ、こんなところで笑わなきゃいけないのかい?」と戸惑いを感じてしまったりする。
他に笑える書籍はないかと探し回っていたりすると結局のところ、興津要編・古典落語(下)に行き着いてしまったりする。

本屋に行って、書棚を見回してみるといい。「笑わせてくれる本」など皆無に等しいことがよくわかる。

そんな中、この『大嘘新聞』は「人を笑わせることを目的とし、かつ素直に笑わせてくれる」という類稀な実に貴重な書籍と言える。

本の内容は新聞形式、雑誌形式、小説形式と様々だが、どれもサクッ読めて、大笑いできると言う点では共通している。4人の共著であるため様々な作風も楽しめてお得だ。

まずは大嘘新聞の大嘘新聞たる新聞形式の嘘記事、光デパート氏の「病名アカデミー賞にサイトメガロウイルス感染症」、「世界看護婦選手権」、やゆよ氏「『神の見えざる手』ついに捕獲」、「変わる日本のちゃぶ台」… どうだろう?タイトルだけでかなりそそられてこないだろうか。新聞形式の嘘記事を創始した光デパート氏。コンスタントに傑作を紡ぎだしてきたやゆよ氏の高クオリティな作品群が惜しげも無く収録されている。

 毎年、4月1日に慣れぬ「嘘記事」をつくり、真面目な読者の批判を受け、日本のユーモア精神の無さを嘆いたりする新聞記者諸氏がこの本を読めば、むしろ己の至らなさを嘆く事だろう。

ネットでは読めない義眼氏の雑誌形式の「アメリカの地図記号」「料理まめ知識」も判りやすくて素晴らしい。電車の中で読んでいてやばかったネタの一つだ。

佐野祭氏の大型小説と銘打たれたショートショートも面白い。他の3者の作品が比較的詰め込み型なのに対し、間と余裕を持ってネタを文章として構築する作風で少し方向性が違うが、綺麗にオチをつける様は見事の一言だ。「ストッキング」のオチは虚をつかれ、ひどく笑わされてしまった。また、大型煙草小説「日た」は基本アイデア自体はショートショートとしては定番のネタだが、タバコに範囲を区切った着想が秀逸で、面白い。どこかでこの大型小説をまとめて文庫本にでもしてくれないものだろうか。

「大嘘新聞」の著者達は「ネット作家」というくくられ方をされるであろうが、WEBで生まれ育った人たちというよりは、かつてパソコン通信という土壌で作品を公開して育ってきた人たちだ。パソコン通信はWeb程自由に発言できた空間ではなかった(と思う)。Webは基本的に「発言しっぱなし」の空間だったが、パソコン通信ではコミュニティーとしての色がより濃く、つまらない発言は白い目で見られ、淘汰される(と思う)。

そうして残った作品のクオリティーは本書が示している。「大嘘新聞」はそうしたパソコン通信からWebへの端境期のわずかな期間のネット作家の傑作を集めた貴重な一冊である。これからネット作家と言われる作家は増えていくだろう。しかし、これからのネット作家の創作が、パソコン通信を引きずってきた世代程のクオリティーを保っていけるかはやや疑問だ。

さて、その本の目的も、経緯も珍しい本書だが、最後に一つ付け加えるならば、現時点においては発行部数から言って、非常に稀少な書籍であるので、見かけたらすぐ購入することをオススメする。次にあなたが見かけたときにその書籍はそこには無い可能性が高い。迷わず買った方が良いだろう。


書籍データ
書名「大嘘新聞」 著・光デパート ・やゆよ・義眼・佐野 祭
出版社 新潮社 ; ISBN: 4104446017  販売価格 1000円(税別)
  嘘 度:★★★★
  笑 度:★★★★★
 入手易度:やや容易(紀伊国屋書店かネット書店で入手可)

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